木目羹(きもっかん)・鹿児島県
鹿児島の銘菓といえば「かるかん」を思い浮かべる人が多いと思いますが、両親が鹿児島出身のわたくしにとりましては、「かるかん」以外にも幼少時から慣れ親しんだ銘菓がたくさんあります。中でも、「高麗餅(これもち)」「煎粉餅(いこもち)」と共にお祝い菓子の代表格がこの「木目羹(きもっかん)」です。
室町時代に守護大名島津武久が京都から薩摩にもたらしたと伝えられる歴史のあるお菓子であり、小豆餡と白餡、2色の餡で木目模様を作る棹菓子です。
この木目は温帯南部エリアに広く分布するクスノキの木目になぞらえたものだとか。木目(年輪)の成長のように子どもの健やかな成長を願う意味を込めて名付けられたお菓子だそうです。 *1
明石屋の「木目羹」の食感は、寒天を使う練り羊羹や一般的な蒸し羊羹などに比べると弾力は少なめ、実際に硬くはないのですが硬派でシャキッとした感じ、小豆の主張はかなり強く香りもしっかりと生きており、どっしりと重量感があって食べ応えたっぷりです。行ってみれば西郷さんみたいなどーんと構える薩摩武士のイメージでしょうか。
その製法は、
『 アズキの漉し餡(こしあん)をつくり、別に白インゲンの漉し餡とヤマノイモのすりおろしを柔らかく溶いて小豆(あずき)餡の上に流し、三本歯の笄(こうがい)のようなもので手早くかき立て、蒸籠(せいろう)で蒸してから棹物に切る。小豆ういろうの風味とヤマノイモの香りを備えた品格の高い菓子である』となっています。 *2
*1、*2:出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
現在の「木目羹」に、ヤマノイモが使われているかどうかは不明ですが、「白漉し餡」+「ヤマノイモ」=「薯蕷練り切り」の風味が白い生地から感じられたらすごく美味だろうなと想像しています。
実は、わたくし、この「木目羹(きもっかん)」はどのようにして作っているのだろうと子ども時代からすごく興味があり、あれこれ想像力を巡らせ、自分で実験してみたほどです。すごく手のかかる方法を思いついて作ってみたりもしました。
笄(こうがい)、つまり櫛のようなもので生地をひっかいて模様を作るとは思い浮かびませんでした。
ちなみに富山県には『どこを切っても綺麗な木目模様が現れる全国唯一の杢目羊羹(もくめようかん)という和菓子があり、こちらはさらにわたくしの興味を惹いておりますので、いつか実物を目にしてみたいと思っています。
明石屋